『命の格差は止められるか―ハーバード大日本教授の、世界が注目する授業―』イチロー・カワチ
命の格差は止められるか: ハーバード日本人教授の、世界が注目する授業 (小学館101新書)
- 作者: イチローカワチ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2013/07/31
- メディア: 新書
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この本の著者は「社会疫学」の専門家。
社会疫学とは、「What is the problem upstream?(上流でどんな問題が起こっているか?」、つまり健康の上流=人々の置かれた社会・環境の影響を考える学問です。
私自身とても興味がある領域で、将来的にはこのあたりを専門にしたいなあとぼんやり思っています。
日本はなぜ世界の中でも長寿国なのか?日本の中でもなぜ都道府県・地域によって寿命が異なるのか?
ちょっと考えてみたらとても不思議ですよね。
この本はこれまでの社会疫学の研究成果(教育・経済状況と健康が関連していることは有名ですね)を紹介するだけでなく、健康的な社会を築いていくうえでのヒントもたくさん含まれていました。
特に印象的だったのは「第6章 果たして、人の行動は変わるのか」
人間が行動を選択する際は理性(健康的かどうか)よりも感情(魅力的かどうか)が優先されやすいことを指摘しています。その上で、これからの健康的な行動変容を促す取り組みには、感情に訴えることが得意な民間企業のマーケティングや広報活動に学ぶものがあるかもしれないと書かれていました。
このあたり、めちゃくちゃ思い当たることがあって、行動のメリット・デメリットを説明して理性に働きかけるって手法じゃあんまり効果見られないっていうのはもうみんなわかってることですよねきっと。そして、糖尿病は帰宅後コントロール不良になるし、脳血管疾患の再発も起こるわけです……
今後はNCDの予防とコントロールの時代でしょうから、行動変容とその維持をサポートする新しいアプローチが開発されていくんでしょうね。もちろんハイリスクだけでなく、社会全体を対象にしたポピュレーション・アプローチも、ですが。